DX勉強会
2026年4月24日 日本の農業の可能性
農林水産省農村振興局農村政策部農村計画課
日本の農村は、都市部に先行して高齢化が進む深刻な人口減少の危機に直面している。農村において、集落の戸数が10戸を下回ると伝統文化の継承や生産基盤の維持が困難になるという現実がある。こうした中で、食料安全保障の強化や買い物難民への対応、さらに農業由来の温室効果ガス削減といった環境課題への対応が、急務となっている。
これに対し農林水産省は、従来の枠組みを超え、学生や民間企業を積極的に巻き込むプラットフォームを構築し、外部人材の多様な知見を現場の課題解決に繋げることで関係人口を拡大する事を目指している。単なる補助金支援ではない、持続可能で自立した地域社会の再建を目指す新たな農政のあり方を模索している。
山崎能央氏(株式会社ヤマザキライス 代表取締役)
補助金に頼らず自立して稼ぐ経営を目指し、技術経営を行っている。DX化を徹底的に進め、衛星データやAI栽培管理システムを活用して生育状況を可視化することで、経験のない若手でも成功できる農業を確立した。完全週休2日制や残業ゼロなど、一般企業並みの労働環境を整備し、若者が憧れる産業への転換を図っている。特に、節水型乾田直播の技術は、生産コストを従来の4分の1以下に抑え、水管理の手間を劇的に削減することができる。
同時に、水田からのメタンガス排出を76%削減するなど、環境負荷の低減と高収益化の両立を可能とする。2030年の担い手不足危機を見据え、テクノロジーによって農業の産業構造そのものを転換し、未来の食糧基盤を整備しようとしている。


2026年3月27日 日本の一次産業
環境省 地域循環共生圏推進室
2024年に策定された計画に基づき、将来世代を含む国民一人ひとりの幸福(ウェルビーイング)向上を重視。経済価値だけでなく非市場的価値を考慮し、自然資本を基盤とした社会経済システムへの「リ・デザイン(再構築)」を提唱している。 地域の環境・社会・経済の課題を統合的に解決する「地域循環共生圏」を推進。佐賀県鹿島市の「グリーンインフラ日本酒」など、地域資源を活かしたボトムアップの成功事例を紹介し、補助金頼みではない「伴走支援」による下地づくりの重要性を説く。
成功の鍵は、地域住民がワクワクして取り組めること、多様なアクターが対等なパートナーシップで協働すること、そして曼荼羅チャート等を用いて共通のビジョンを可視化することであると強調された。
徳江倫明氏(株式会社日本再生農業 会長 / らでぃっしゅぼーや 創業者)
「らでぃっしゅぼーや」を立ち上げ、批判や告発にとどまらない「代案提示」としての有機農業マーケットを拡大。生産者と消費者が直接結びつくサブスクリプションモデルの先駆けとなり、非営利組織とビジネスの両立(ソーシャルビジネス)の可能性を実証した。
「すべての人は農業をする権利がある」と主張し、新規参入を阻む農地法等の規制緩和を訴える。人口減少ではなく「東京一極集中」を問題視し、AIやSNSを活用した「一人一社」の時代における、二拠点居住や小規模・多点在型農業への移行を提言している。水俣病(チッソ)などの公害問題を背景に、化学肥料・農薬依存の「近代化」を見直すべきと主張。漁師による植林運動「森は海の恋人」を例に、森・里・川・海の連環を取り戻し、自然の循環を断ち切らない「予防原則」に基づいた農業への転換を説く。


2026年2月24日 林業の現場の魅力と課題
長野麻子氏(株式会社モリアゲ 代表取締役)
日本の森林率が世界3位である一方、国民の生活と森林が断絶している現状を指摘。林野庁時代の経験から、行政の枠組みを超えて「森を想う人を7割にする」ことを目標に掲げ、都市部と森林、あるいは林業と他産業(漁業など)を繋ぎ直す「モリアゲ活動」を推進している。森林を単なる木材供給源ではなく、年間70兆円以上の価値を生む「自然資本」と位置づける。気候変動対策やネイチャーポジティブ、ウェルビーイングへの貢献を強調し、マクドナルドやセブン-イレブン等の大手企業を巻き込んだ「ウッドチェンジ(木造化・木質化)」の重要性を説く。ソマノベース(苗木育成)やForenta(森林レンタル)といったベンチャー企業の事例を挙げ、これまでの「切って売るだけ」の林業ではない、多様な森林の活用方法と経済循環の必要性を主張。
鈴木敦子氏(認定NPO法人環境リレーションズ研究所 理事長)
「贈り物に木を植える」というコンセプトを軸に、全国の被災跡地や開発跡地での森林再生を展開。自治体や地元の森林組合と10年間の協定を結び、都会の個人や企業が「里親」として苗木を育てる仕組みを通じて、放棄された土地の価値を回復させている。植樹をきっかけとした関係人口の創出に注力。単に木を植えるだけでなく、都会の人が現地を訪れ、ジビエ料理やキャンプ、地元住民との交流を楽しむ場を作ることで、地方経済の活性化と森林への関心維持を両立させている。日本発祥の「森林浴」が持つ健康増進効果を、科学的知見に基づき社会へ普及させる活動に言及。森林が持つ多面的な機能を、個人のライフスタイルや企業の福利厚生に組み込むための橋渡しを担っている。


2026年1月23日 日本の第一次産業
農林水産省 農村活性化推進室
ウクライナ情勢や地政学的リスク、日本の経済力低下による「買い負け」を受け、輸入依存のリスクを強調。農業従事者の激減(20年後には1/4)を見据え、スマート農業の導入や農地集約による「稼げる農業」への構造転換、および食料安全保障の再定義が必要。LLM(大規模言語モデル)等のAI活用が、ホワイトカラーを淘汰する一方で、現場の暗黙知を可視化し、農業の生産性向上や高収益化を導く「起死回生のチャンス」になると指摘。地銀をハブとした中間支援組織や、企業の参入(ブランド・人的リターン)による地域活性化の重要性を説く。
西内啓氏(統計学者 / 内閣府EBPM補佐官)
日本の課題は労働者ではなく「経営者側の質」にあるとし、一人当たりGDPの改善には統計学やメカニズムデザインの活用が不可欠であると論じる。人口減少下では、サービス維持のために一定の集約化(人口計画)が必要であるとの見解を示す。 農業が持つ多面的機能(水源涵養や環境保護など)を「正の外部性」として市場で取引可能にする仕組み作りを提案。食料安全保障についても、100%の自給を目指すのではなく、ワーストケース(商船が届くまでの2ヶ月間等)を想定した備蓄や、有時に即座に切り替えられる所得補償制度の設計を重視する。


2025年12月26日 農業現場の魅力と課題と対策
田丸さくら氏(NIPPON TABERU TIMES 代表 / 株式会社農考舎)
10代・20代をターゲットに、農家の哲学や魅力を発信するメディアを運営。3K(汚い、稼げない等)のレッテルを剥がし、「楽しそう」という感情から一次産業に関わる「関係人口」の創出。 山形県小国町などの事例を通じ、PRから受け皿(シェアハウス整備など)までをサポート。若者が失敗を恐れずチャレンジできる環境や、繁忙期に他産業へ移動できる人材派遣の仕組みを構築し、地域の自走を目指している。自身もスプラウトニンニクを生産。現場のニーズを理解し、製造業の品質管理やITの感覚を農業に持ち込む異業種参入の可能性や、小規模農家の知をマニュアル・機械化で継承する必要性を説く。
下村豪徳氏(株式会社笑農和 代表取締役)
富山県でITを活用した水管理システム「paditch」を展開。人口減少に伴い、将来的に一人で70ha(現在の約5倍)を管理せざるを得ない状況を見据え、ロボット技術やICTによる超省力化を推進している。24時間稼働のセンサーやGPS、自動操舵トラクタを導入。ベテランの技をデータ化して可視化することで、指示ミスを防ぎ、経験の浅い従事者でも高品質な生産が可能になる仕組みを提案している。 農業人口の激減と高齢化(平均69歳)に対し、距離の概念を取り除く遠隔管理を提唱。気候変動や身体的限界による離農リスクを、デジタルデータによるリスク分散と自動制御技術でカバーする重要性を強調する。


2025年11月28日 食糧政策を考える
福島伸享氏(衆議院議員)
一般的な市場経済では、売り手と買い手の間に「情報の非対称性」があり、原価を知る売り手側が価格決定権を持つことが多々ある。しかし、農業の世界はこれとは真逆で、農産物は貯蔵が難しく、手元に置くほど価値が低下するため、農家は市場の言い値で売らざるを得ない。昨今の米価高騰について、世間の説の多くは的外れである。かつて国が管理していた米価は、市場経済への移行によって長らく低迷し続け、現在の価格上昇は、30年の時を経て元に戻ったといえる。この低価格時代を生き残ったのは、手間がかからないという米作りの特性を活かした兼業農家であった。彼らは他に収益があるため、米が安くても撤退しない一方で、規模拡大を図りプロとして農業を営む専業農家が、低価格とコスト高の波に飲まれて倒産している。昨今の高騰は、国が需給を管理していたところに、災害不安による買い占めが重なった一時的な現象であり、供給自体は本来足りている。農業の価値は、農業生産それ自体だけではない。日本の美しい棚田や段々畑、整備された農村の景観は、農民たちの膨大な労力によって維持されてきた。これは経済学でいう外部経済であり、目に見えない公共的な価値である。また、農業は日本人の精神性とも関連があり、皇室行事や伊勢神宮に象徴されるように、日本の文化は稲作と密接に結びついている。集落の営みは、共同体を支える繋がりを形成している。
小相澤隆幸氏(上田副市長)
上田市は戦後間もないころに生まれたから専業農家が多かったが、働くところができだしたことで、会社勤めが増えだした。機械化も、土地の整理もない当時、農業は大変つらい作業であり、地域の共同体で助け合って農業をしていた。農業構造改善事業により、より小さい田んぼを効率的に農業ができるように、土地の整理や道路の整備等を進めた。この結果できた道路などは、今でも地方生活者の基盤となっている。細い農道が、今や県の基幹道路になっていき、農地が広くなったうえに、道路沿いには商業施設や飲食店が立って行った。農業振興地域としてある地域を、将来開発しやすいようにする。自分の家を狭くしたくないから、協力しないなどということはなく、皆善意で将来世代のことを考えながら供出した。ただ、未計画で開発すると虫食い状態になってしまう。地域未来投資促進法で上田市でも4か所ほど、開発を計画的に進める地域を設定している。手で植えていたのが、田植え機になったり、コンバインになったりと、機械化が進んでいった。農業へのイメージが悪かったが、武石町に異動になったことで、その価値観が転換した。害獣に農作物の被害を受けていたが笑って過ごしてるのを見て感銘を受けた。どうやったら張り合いがあって持続可能な農業ができるかを協力して考え出していた。そして若い農家と連携しながら酒米の生産を復活させ販路を拡大した。中山間地総合整備事業では、大学生からのアイデアを得る。夜景の利用、棚田でのキャンプや朝食など高付加価値化を行っている。楽しく元気に農作業を行えるような環境づくりを目指す。継ぎ手をしっかり残すためにも農家=辛い、というイメージを払拭していきたい。


2025年10月31日 バイオ政策を考える
原田大士朗氏(ちとせ研究所)
Dataからinformationができ、informationからintelligenceを産む。このintelligenceを作るのがちとせがしていることである。石油でできることというのは、藻ですべてできるから藻に着目している。研究開発するときには、それが実現したあとの社会がどうなっているのかを考える事が大切である。従来の開発は技術から製品という外向きの波及であったが、これからは内向きの波及が大切となる。ソニー等日本メーカーは前者の傾向が強く、一方でアップル等は後者の傾向が強い。この違いが2010年以降のスマホ開発において決定的な差を生んだ。実際に、現在は技術ではなく課題のソリューションに資金が集まる。科学技術と社会課題をつなぐビジネスが必要とされている。このような時代においては産官学における学の役割は収益性のない基礎研究を担う事である。


2025年9月26日 人口減の中で医療・福祉充実社会を考察
猪飼周平氏(一橋大学教授)
政策学者の役割は、社会や問題における地図を作って全体像を提示することであり、それを官僚や政治家などが利用して社会を動かす。生活困難の複雑さは収入に依存する物ではない。だからこそ、幅広く社会からの支援というのは必要といえる。そこで重要なのがソーシャルワーカーという存在である。近頃はソーシャルワーカーをAI化する試みがある。こうしたAIの活用で普段からソーシャルワーカーの支援を受けられるようになる。これから国家が成熟していくにつれ、今までほとんど行われていない国の文化に対する政策の比重が圧倒的に高まってくるが、文化政策というのは公共政策のロジックがないのが難しい。


2025年7月18日 地方創生を考える
岡本圭司 氏(鳥取県北栄町 副町長)
井上雅国 氏(埼玉県横瀬町 副町長)
岡本様と井上様には、それぞれ北栄町と横瀬町で行っている様々な地域活性事業について丁寧に解説していただきました。北栄町のお話からは、二地域居住の推進や町役場での地域での副業制度などを通し、様々な人を様々な形で巻き込んでいく地方創生のあり方を学びました。横瀬町では、町を「実証実験の場」と銘打ち、人々がチャレンジを実現できる場所としての環境づくりをしていったということを伺いました。


2025年6月27日 農業から地方創生
農林水産省農村計画課 課長補佐
今回の勉強会では、農水省の安居様に、人口が減少していく農村の農業をどう守っていくか、そして日本の食料安全保障をどう守っていくかという課題に対して、農水省が行っている取り組みについてお話を伺いました。様々な人々や企業が農業に関わっていくことで日本の農業を維持していけるのではないかというお話を聞き、未来の日本の農業の形を考える機会となりました。


2025年5月30日 地方創生を考える
青野高陽 氏(岡山県美咲町 町長)
青野町長からは、人口減少していくこの社会において、美咲町ではいかにしてダウンサイジングを実現していったか、それにはどんな苦労が伴ったか、改革者としての実体験を教えていただきました。
田中秀明 氏(明治大学専門職大学院 明治大学ガバナンス研究科 専任教授)
田中教授には、現在の地方分権の制度の解説とともに、地方創生政策が10年間うまくいっていなかったという実態と、その原因を解説していただきました。現在の地方への分配の仕組みが過剰であり、それが非効率への誘引となりモラルハザードを引き起こしていることを指摘した上で、人口減少に合わせて制度を変えていくことが必要だとのご指摘から、マクロ的観点での地方創生の考え方を学びました。


2025年4月25日 地方創生の本質を考える
岡部友彦 氏(コラボ合同会社 代表)
講師は、建物を整備するだけでは街は変わらず、地域の資源、人の関係性、小さな事業を組み合わせて「こと」を育てることが重要だと説明した。まちづくりでは、まず地域の人間関係や力学を丁寧に把握し、すぐに大きな事業を始めるのではなく、ワークショップや実験的な取り組みを通じて仲間を増やしていく必要がある。愛媛県松山市の三津浜では、空き家を単に紹介するだけでなく、地域の面白い人や店とつなげることで、移住者や新規出店者を呼び込み、空き家の再活用と商店街の再生につなげてきた。また、古い病院跡をシェアショップとして再生し、起業の場や家賃収入を生む拠点にするなど、空き家を地域の資産として活用している。講師は、地方創生には、外から大きな開発を持ち込むよりも、地域にある小さな資源を見つけ、収益を生む仕組みに育てながら、長期的に街の変化を作る姿勢が重要だと整理した。
国土交通省国土政策局地方政策課 地域づくり活動推進官
講師は、二地域居住政策について、単なる移住定住ではなく、複数の生活拠点を同時に持つ新しい暮らし方として説明した。従来の制度は、一つの住所、一つの生活拠点を前提に作られてきたが、リモートワークの普及や価値観の変化により、都市と地方を行き来しながら暮らす選択肢が広がっている。二地域居住は、地方への関係人口を増やすだけでなく、不動産、交通、空き家活用、地域の担い手確保など、さまざまな政策分野と関わる。そのため、国土交通省が住宅、移動、地域拠点整備などを横断的に扱いながら推進している。講師は、制度を上から作るだけでなく、自治体や民間事業者によるモデル事業を通じて、住民票、教育、保育、雇用、移動費負担などの課題を洗い出し、実際の暮らしに合う制度へ変えていくことが重要だと述べた。


2025年4月2日 補助金なく地域に活性起こしたオガール事例
岡崎正信 氏(株式会社オガール 代表取締役)
講師は、岩手県紫波町のオガールプロジェクトをもとに、公民連携による地方創生の考え方を説明した。行政主導の再開発は、需要や運営を十分に考えないまま施設整備を目的化し、失敗する例が多いと指摘した。紫波町では、行政が土地を持ち、民間が市場性を見極め、銀行から資金を調達しながら、計画・開発・運営を一体で進めてきた。講師は、公民連携では補助金に依存するのではなく、行政が制度や土地を活かし、民間が経営や運営の力を発揮する役割分担が重要だと述べた。また、地方創生では東京の真似をするのではなく、地域固有の資源や土地の安さを活かし、地域に合った事業を作るべきだと強調した。


2025年3月28日 地方創生の本質を考える
金井利之 氏(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
講師は、地方創生を考える際には、単に「地方を元気にする」という発想にとどまらず、社会や文化のあり方までさかのぼって考える必要があると述べた。地方創生は一見取り組みやすい政策テーマに見えるが、現場ごとに課題や条件が異なるため、抽象的な制度設計だけでは効果が出にくい。講師は、構造改革特区で小規模な酒造免許を認めた事例などを挙げ、全国一律の制度ではなく、地域の実情に応じた仕組みを作ることの重要性を説明した。地域を外から眺めるだけでなく、具体的な現場に立ち、別の視点から補助線を引くことで、地方創生の本質的な課題や新しい政策アイデアが見えてくると整理した。
左京泰明 氏(NPO法人シブヤ大学 代表理事 / 一般社団法人マネージング・ノンプロフィット 代表理事 / 一般社団法人TEN-SHIPアソシエーション)
講師は、渋谷大学の運営経験をもとに、地域に根差す事業を継続させるための仕組みについて説明した。渋谷大学は、校舎を持たず、渋谷の街全体をキャンパスに見立てた市民大学であり、誰でも無料で参加できる学びの場として運営されている。講師は、助成金だけに依存した地域事業は継続しにくく、多様な資金調達と、価値を提供できる人材・スキルが必要だと述べた。非営利活動であっても、収益事業を組み合わせ、その収益を公益的活動に回す設計が重要である。渋谷大学では、自治体との連携に加え、企業や地域団体と協働しながら講座やイベントを企画し、地域課題への参加の入口を作っている。講師は、地域に根差す事業には、理念だけでなく、運営を支えるビジネスモデルと人の関わりを生み出す仕掛けが必要だと整理した。


2025年2月28日 地方創生(地方の元気)
正田聡 氏(独立行政法人中小企業基盤整備機構 理事)
講師は、中小企業を取り巻く課題と支援政策について説明した。日本には約340万の中小・小規模事業者があり、人手不足、原材料・エネルギー価格の高騰、価格転嫁の難しさ、DX・GX対応、事業承継など多くの課題に直面している。講師は、すべての企業を一律に支援するのではなく、地域経済を牽引する成長企業と、地域コミュニティを支える小規模事業者の双方を見ながら政策を組み立てる必要があると述べた。特に、売上100億円を目指す企業を育てる政策、成長加速化補助金、人材マッチング、省力化投資、海外展開支援、価格転嫁のための原価管理ツールなどを紹介し、今後は補助金だけでなく、企業の稼ぐ力を高める伴走支援が重要だと整理した。
池田寛人 氏(fanbase company コミュニティ事業部長 / 株式会社酒と学校 企画・広報担当)
講師は、地域や事業を成長させるうえで、単に新規顧客を集めるのではなく、既に強い愛着を持つ「ファン」を起点に広げていくことが重要だと説明した。ファンは商品や地域の価値を深く理解しており、口コミによって新たな関心層を生み出すだけでなく、事業者自身が気づいていない魅力を言語化してくれる存在でもある。そのため講師は、ファンに傾聴し、情緒的価値や他者が真似できない魅力を明らかにする「ファンミーティング」を重視している。地域事業でも、地域のファンが共感し応援したくなるストーリーを作ることで、初期ユーザーを獲得しやすくなり、事業の成功確率を高められると述べた。また、施設整備や新規事業はハードを作るだけでは不十分であり、地域の価値を理解した人がおもてなしを行い、訪問者をリピートファンに変えていく設計が必要だと整理した。
田本英輔 氏(三井物産デジタルアセットメント株式会社デジタル投資銀行部長)
講師は、地域事業を進めるうえで、補助金や流行のデジタル施策を入れること自体を目的化してはいけないと述べた。地方では、補助金を活用して施設整備や地域通貨、デジタル施策を導入する例があるが、地域をどの順番で元気にしていくのかというグランドデザインがないまま進めると、事業規模だけが大きくなり、地域の実情に合わないものになりやすい。講師は、ベンチャーのように小さく始めて検証しながら広げる「リーンスタートアップ」の発想が、地域づくりにも必要だと説明した。重要なのは、最初から大きな箱を作ることではなく、地域の課題と顧客を見極め、実際に使われる仕組みを段階的に育てることである。また、補助金やデジタル技術は手段であり、地域に人とお金が継続的に循環する設計があってこそ意味を持つと整理した。


2025年1月31日 観光
沢登次彦 氏(株式会社リクルートじゃらん リサーチセンター長)
講師は、観光を通じた地方創生について、国内旅行とインバウンドのデータをもとに説明した。日本人の観光宿泊旅行は、コロナ禍後も実施率が十分に戻っておらず、特にシニア層の回復が遅い一方、一人旅や大人親子・兄弟姉妹での旅行が伸びている。旅行目的では、食、温泉、宿での滞在が上位にあり、地域全体で飲食・土産・体験などの現地消費を高めることが重要だと述べた。また、インバウンドは大きく伸びているが、三大都市圏に集中しているため、地方誘客には、地域固有の文化・自然・食を磨き、住民理解や民間事業者の本気度を引き出すことが必要だと強調した。
富田建蔵 氏(海外交通・都市開発事業支援機構 執行役員・企画総務部長)
講師は、観光庁の政策やインバウンド回復の状況をもとに、観光行政の課題を説明した。訪日外国人旅行者数や消費額はコロナ前を上回る水準まで回復し、観光は大きな成長産業となっている。一方で、宿泊や消費が東京・大阪・京都など三大都市圏に集中しており、地方へ観光客を分散させることが大きな課題であると述べた。地方誘客は、オーバーツーリズムの緩和だけでなく、インバウンドの利益を地方に循環させる意味でも重要である。今後は、リピーターを地方へ誘導し、観光資源の磨き上げやプロモーション、受入環境整備を組み合わせながら、地方にも観光の経済効果を広げていく必要があると整理した。


2024年12月13日 ドローンの果たす日本の課題解決
経済産業省製造産業局次世代大空モビリティ政策室長
講師は、ドローンを中心とする次世代空モビリティ政策について、産業育成と社会実装の両面から説明した。能登半島地震では、被害状況の把握や物流にドローンが活用され、災害時の有効性が示された一方、自治体によって導入状況には差があり、先進自治体の知見を共有する場が必要だと述べた。その一環として、国交省や都道府県と連携したドローンサミットを開催し、自治体間の情報共有や利活用促進に取り組んでいる。また、国内のドローン産業は、中国製機体が先行する中で、価格や安全管理、マーケット形成の難しさに直面していると説明した。そのため、小型ドローンについては中国製機体に対抗できる飛行時間・耐風性・耐雨性を備え、AIによる安全確保機能も持つ機体開発を支援している。今後は物流などの分野で実際に使われる市場を作るため、ビジョンやロードマップを示し、初期需要を生み出す政策的インセンティブが重要だと整理した。
渡邉善太郎 氏(株式会社スカイマティックス 代表取締役社長)
ドローンや衛星、LiDAR、360度カメラ、スマートフォンなどから得られるデータを解析し、建設・林業・防災・農業などの調査点検業務を効率化する技術について説明した。従来、三次元復元処理やGISは海外製技術に依存していたが、講師の企業ではこれらを国産化し、画像解析AIと組み合わせた時空間解析プラットフォームを開発した。ドローン測量ソフトでは、撮影データをアップロードするだけで三次元データを作成し、土量計測、森林資源量の把握、太陽光発電施設の日射シミュレーション、災害時の土砂量把握などに活用できる。ドローン自体は「空飛ぶスマホ」のようなものであり、社会実装の鍵は機体ではなく、業務に使えるソフトウェアや制度との接続にあると強調した。また、技術が普及するには、制度・技術・ビジネスモデルを一体で考える必要があり、人手や時間が減る一方で業務量や災害対応が増える領域にこそ、テクノロジー導入の余地が大きいと述べた。


2024年11月20日 食の安全保証を「平時から考える」
農林水産省水産庁資源管理部 国際課漁業交渉官
講師は、食料安全保障をテーマに、日本の食を支える構造と政策立案の考え方を説明した。食料安全保障とは、安全で栄養ある食料を安定的に供給し、国民一人一人がそれを入手できる状態を指す。日本では、米中心の食生活から肉・油脂・小麦・大豆などを多く消費する食生活へ変化したことで、国内農地だけでは現在の食を支えきれず、輸入への依存が高まっている。一方で、輸入には気候変動や輸出規制、国際情勢の変化といったリスクがあるため、国内生産の増大、安定的な輸入、備蓄を組み合わせる必要があると述べた。具体策として、スマート農業、農地の集積・集約、輸出産地の形成、品種改良、買い物困難地域やフードバンクへの支援を挙げた。また、食料供給困難時には、政府が兆候段階から状況を把握し、関係省庁と連携して出荷・輸入・生産を段階的に調整する制度設計が重要だと強調した。


2024年10月25日 防災・減災
国土交通省 水管理・国土保全局防災課対策室長
第26回学生のための政策立案コンテストの優勝チームが提示した「大地震による人的被害の最小化」を目的とする4つの政策提案の発表が冒頭で行われた。これに対して、現状・課題・対応案が論理的に整理されている点を高く評価した。優勝チームは、能登半島地震で道路寸断が発生したことを踏まえた盛り土造成地の調査・補強、耐震化が進みにくい高齢者世帯への事前補強の促進、首都直下地震で想定される火災被害に備えた感震ブレーカーの普及、避難所へのラストワンマイルにおける物資滞留を防ぐための色付き段ボールや色判定アプリの活用を提案した。これに対し講師は、個々の対応案が完全な正解かどうかは別として、盛り土、住宅耐震、火災対策、物資支援という複数の観点から防災を捉えている点に意義があると述べた。特に、防災は一つの技術や制度だけで完結するものではなく、インフラ、生活、行政、避難者支援を含む多面的な課題であるため、幅広く論点を抽出した姿勢を評価している。また、政策を考える際には「何が本質的な社会課題なのか」を見極め、そのうえで現状分析から対応案までを短く的確に伝える力が重要であると指摘した。自身の経験として、河川行政や災害対応の目的は堤防や制度を作ること自体ではなく、その先にある地域の経済活動や人々の暮らしを守ることにあると語り、学生に対しても、専門分野を問わず社会課題の解決に人生をどう結びつけるかを考えてほしいと促した。


2024年9月 DX化で地方創生を考える
内閣官房デジタル行財政改革会議事務局 兼 デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 参事官
講師は、地方創生やデジタル田園都市国家構想を考える際に、「人口減少は悪い」「東京一極集中は悪い」といった前提をそのまま受け入れず、まず疑って考えることが重要だと述べた。地方創生は、単に地方へ人を移す政策ではなく、日本を経済的・文化的に再び成長軌道に乗せるための手段である。講師は、国力を経済力、人口、軍事力、ソフトパワーを含む総合力として捉え、地方創生にはスタートアップ、中小企業、製造業のイノベーションが不可欠だと説明した。また、山形県での経験をもとに、オンラインで地域と海外をつなぐ取り組みや、軽トラピアノのように地域文化・デジタル・発信力を組み合わせる実践を紹介し、デジタル化は地域に新しい出会いと成長の機会を生むものだと整理した。
春田健作氏 ((株)Growing Lab 企画部シニアマネージャー&国土交通省ハンズオン支援アドバイザー)
講師は、国土交通省の新技術導入アドバイザーとして自治体支援に関わってきた経験をもとに、地方創生におけるデジタル化の現場課題を説明した。講師は、橋梁整備や研究機関、自治体、民間企業での経験を踏まえ、現場に新技術を導入するには、制度や補助金だけでなく、実際に使う人が理解し、訓練しながら運用できる仕組みが必要だと述べた。ドローンなどの新技術も、導入しただけでは意味がなく、職員自身が使い方を学び、災害対応や地域課題の解決に結びつけることが重要である。講師は、地方創生におけるデジタル化は、単に機器やシステムを入れることではなく、地域に新しい仕事を生み、住民や職員の手間を減らす実装として進めるべきだと整理した。


2024年7月 防災・減災
長野県建設部建設政策課 技術管理室 基準指導班 主任
長野県建設部からは、令和元年東日本台風(台風19号)での千曲川決壊など甚大な被害を教訓に構築された「長野県インフラデータプラットフォーム」や、広大な県土を持つ長野県において、災害時の情報収集・共有の遅れを解消するため、スマートフォンやクラウド型GIS、3D点群データを活用したシステムについてお話しいただきました。
国土交通省 水管理・国土保全局 防災課 災害対策室長
国土交通省の講師の方はディスカッション形式で参加学生と対話され、災害対応の全体像やご自身が取り組まれている流域治水やかわまちづくりといった政策が見据えている100年先の未来について共有していただきました。


2024年6月 平時のDX活用が災害時の備えとなる
平塚敦之 氏 (情報処理推進機構参事兼理事長補佐(元デジタル庁審議官))
平塚氏からは、経済産業省・デジタル庁での経験を踏まえ、業界を超えたデータ連携基盤「ウラノス・エコシステム」や、自動運転・ドローンのための「デジタルライフライン」構築について解説いただきました。また、サイバー攻撃が物理的なインフラを狙う現状に対し、能動的に防御する「アクティブ・サイバー・ディフェンス」の必要性や、セキュリティ認証の制度設計など、安全なデジタル社会基盤を作るための取り組みを説いていただきました。
福井県東京事務所副所長
福井県東京事務所の講師の方からは、除雪車にGPSを取り付けた運行管理システムによる業務効率化や、パトロールカーのドライブレコーダー映像の活用など、現場の維持管理業務におけるDX事例をご紹介いただきました。また、能登半島地震の際には、これらのシステムやノウハウを活用し、被災地支援を行った経験についてお話しいただきました
大阪府池田土木事務所 維持保全課 計画保全グループ
大阪府池田土木事務所からは、支援を経験した熊本地震における甚大な被害状況と、その復旧プロセスの実態についてご報告いただきました。河川や道路などのインフラ施設が壊滅的な被害を受ける中、膨大な数の災害査定や復旧工事をどのように進めたかという、被災地派遣職員としてのリアルな現場経験を共有いただきました。


2024年5月 災害現場支援と復興を考える
防衛省 航空自衛隊 航空中央業務隊付 1等空尉
講師は、防衛省・自衛隊の災害派遣について、法的枠組みと実務経験をもとに説明した。自衛隊の主たる任務は国防であり、災害派遣は本来任務ではあるものの、国防に支障のない範囲で行われる。そのため、活動には都道府県知事等の要請や行動命令が必要であり、災害派遣、自主派遣、原子力災害派遣などの根拠が法律上整理されている。自衛隊は全国に拠点を持ち、輸送、給水、入浴、給食などを自己完結できるため災害時に頼られる一方、どこまで自衛隊が担うべきかは常に考える必要がある。講師は、豪雨災害や台風、新型コロナ対応の経験から、自治体との連絡調整、防災訓練、地域特性に応じた計画の重要性を強調した。
農林水産省 輸出・国際局 新興地域グループ長
講師は、経済産業省時代の災害対応経験と、現在の農林水産省での立場を踏まえ、復興支援や地域産業の再建について述べた。災害対応では、道路啓開や物資輸送のような初動対応だけでなく、被災後に地域の産業や暮らしをどう立て直すかが重要になる。特に農林水産分野では、食料供給、農地、地域経済が住民生活と密接に関わっており、復興を考える上で欠かせない視点である。また、農林水産分野には研究開発や技術の蓄積がある一方、それを社会実装につなげる発信や他分野との連携が課題であると整理した。


2024年4月 災害現場の医療と社会インフラ管理
髙力俊策 氏 (医療法人徳洲会 湘南藤沢徳洲会病院 院長補佐)
講師は、外科医・救急医としての経験と、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨、能登半島地震などでの活動をもとに、災害医療の特徴を説明した。救急医療は、一人の患者に医療資源を集中して救命する場であるのに対し、災害医療では、多数の被災者や避難者の中から本当に支援が必要な人を見つけ、限られた人員と資源で全体を支える必要がある。そのため、災害現場では、指揮系統、安全確保、情報伝達、現場評価などを整理するCSMCAや、外部に状況を伝えるMETANのような基本枠組みが重要になると述べた。能登半島地震では、道路寸断により物資や人員の到着が遅れ、避難所支援や巡回診療、仮設診療所、要配慮者へのケアが大きな課題となった。特に、高齢者や要介護者が多い地域では、急性期医療だけでなく、福祉避難所への移行、介護施設や在宅医療との連携、DVT予防の車上体操、段ボールベッドの導入、トイレや水分摂取を含む生活環境の整備が重要になる。講師は、災害医療はDMATのような急性期対応だけで完結するものではなく、避難生活が長期化する中で、医療から福祉へ円滑につなぐ仕組みが必要だと強調した。また、防災は医療従事者だけの問題ではなく、日頃から備えを持ち、誰かに知識を伝えられること自体が人を助ける力になると述べた。
国土交通省 道路局 企画課 評価室長
講師は、国土交通省の災害対応、道路防災、能登半島地震での復旧支援について説明した。大雪時には、高速道路を止めるだけでは一般道に車が流れ込んで滞留が発生するため、近年は一般道も含めた事前通行止めや集中除雪が重要になっている。災害時には、国交省のTEC-FORCEが被災地に派遣され、自治体の情報収集、被災状況調査、復旧費用の査定支援、排水ポンプ車や照明車などの災害対策用機材の運用を行う。また、東日本大震災以降、緊急車両が通れるように道路を切り開く「道路啓開」が重視され、地元建設会社と連携しながら瓦礫や土砂を除去する体制が整えられている。道路防災では、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震、熊本地震を契機に、耐震基準の見直しや落橋防止、法面対策、アンダーパス冠水対策、雪害対策が進められてきた。能登半島地震では、津波警報により初動に制約があったものの、主要拠点を結ぶ道路を優先的に復旧し、半島部では自衛隊のホバークラフトで重機やダンプを陸揚げするなど、通常とは異なる手法で道路啓開を進めた。さらに、防災道の駅や能登里山空港は、支援物資の集積、避難、部隊展開、コンテナトイレの配置、支援者の宿泊拠点として機能した。講師は、道路や道の駅は単なる交通施設ではなく、災害時の支援拠点として重要な役割を持つと整理した。


